「藤沢SST(サステナブル・スマートタウン)」と「東松島スマート防災エコタウン」について話を聴いてきた in PV Japan 2015, 7/31

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出展:パナソニック

東京ビッグサイトで行われていた「PV JAPAN 2015」に行ってきました。
「スマートタウン」に関するセミナーを聴いてきたので、記録を残しておきます。

藤沢SST(サステナブル・スマートタウン)

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「藤沢SST」とは、パナソニックを中心とした企業等が開発するスマートタウン・プロジェクトです。

「藤沢SST」と、一般的な「スマートタウン」

藤沢SSTは次のようなコンセプトのスマートタウンです。

ゾーニングやインフラ設計に偏重せず、「くらし起点」の街を3層で設計。
自然の恵みを取り入れた「エコ&スマートなくらし」が持続する街、サスティナブル・スマートタウン実現します。
(出展:藤沢SST協議会

一方、通常の「スマートタウン(シティ)」とは、次のようなものを言います。

ITや環境技術などの先端技術を駆使して街全体の電力の有効利用を図ることで、省資源化を徹底した環境配慮型都市。
(出展:コトバンク

「藤沢SST」は、「人々のくらし」に重点を置いているという点で、通常のスマートタウンとはコンセプトが異なるようです。
具体的な違いを見ていきます。

違いその1:協議会による「100年ビジョン」

通常のスマートタウンでは、どうしても最先端技術の実験場としての色合いが強くなってしまいます。
「Fujisawaモデル」では、「協議会」を母体としてコンセプトを作り、そこからまちづくりを始めています。
「協議会」は、『まちづくり』や『コミュニティ事業』では欠かせない、さまざまな関係者が集まって話し合いをしながら物事を決めていく会議です。

Fujisawa SST協議会とは:
Fujisawa SSTの2014年春の街びらきに向けて、藤沢市などをアドバイザーに、環境配慮型街づくりやスマートシティ・プロジェクトで先進的な取り組みを進める参画団体17社および1協会により構成される街づくり協議会(2012年10月設立)
(出展:dot朝日

違いその2:「まち親プロジェクト」

都会は、良くも悪くも「住民の消費者化」を招く傾向があります。
「町を掃除したり、便利にするのは、行政や開発会社の役割。」
「住民である自分たちは、面倒な事はあまりしたくない・・・。」
という風に考えてしまいがちです。

藤沢SSTでは、住民が主体となって町を改善するアイデアを出したり、実現していくための制度「まち親プロジェクト」というものがあります。

「藤沢SST」に関する感想


ここからは、私個人の感想です。

  1. プロジェクト説明の動画が良くできている。何百万円も掛かっていそう。「希望」、「未来」、「感動」などのキーワードが浮かぶ。
  2. 今後の流れを注視する必要はあるが、「環境配慮型まちづくり」のモデルケースになる可能性がある。
  3. 町のサービス主体として、協議会や自治組織ではなく「藤沢SSTマネジメント株式会社」を立ち上げた経緯が気がかり。
  4. 継続的なサービスを提供していくには、善意や助け合いの自治組織よりも、ピラミッド型で利益を上げられる会社組織が適しているのかもしれない。
  5. 日本のスマートタウンは戸建が中心のプロジェクトが多いように見える。空間利用・エネルギー・断熱・通勤等、あらゆる効率を考える上でも、集合住宅の方が効率的だと思われる。
  6. 車での交通を減らす施策については不十分に見える(最寄ターミナル駅への公共交通、カーポートの集約等)。

東松島スマート防災エコタウン(積水ハウス)

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東松島スマート防災エコタウンとは:
災害公営住宅と周辺の病院等を結ぶマイクログリッド(電力会社に依存しない自前の電力ネットワーク)により電力供給する本格的スマートタウン
※出展:PRTimes

残業代の件で話題の積水ハウスですが、語り口の軽妙な部長さんによる分かりやすい講演でした。

講演抜粋

講演の中で重要と思った発言をいくつかピックアップします。

  • 儲からない「環境」は意味が無い。
  • 社会の問題を住まいから解決する。
  • 洞爺湖サミット(2008年)で、2050年には2008年と比べて60~80%の温室効果ガス排出量削減を目指す、と日本は宣言した。しかし、日本は産業国であり、産業部門の排出量は減らせないと思われる。
  • 家庭部門の排出量をゼロにする事で、洞爺湖サミットの目標削減量は実現できるのではないだろうか。
  • 2008年からゼロエネルギーハウスに着手した。
  • 省エネは楽でないといけない。会社では数字に追われて、家でも数字に追われたら、たまったものではない。
  • 会社は効率を追求する場所、家庭は平和を追求する場所。
  • ドイツのヴォーバンのようなマニアックなエコ住宅よりも、「ふつうの家ですね(面白くないですね)」と言われるような、和風なエコ住宅の方が売れる。
  • エネルギーのために家を建てる人はいない。
  • 積水ハウスは実は高い。なぜなら、市販の太陽光パネルよりも多くのパネルを載せられる(発電量が多い)から。
  • 「蓄電池なんて売れない」と言っていたが、3・11後に売れるようになった。
  • 3電池連携(太陽光パネル・蓄電池・燃料電池)のシステムは、積水ハウスが世界初。
  • 積水ハウスのゼロエネルギー住宅を購入した人が、台風で周りが停電した時に、全く気付かずに日常生活が送れた、という事があった。お風呂も使える。
  • セロエネルギー住宅を買ったお客さんには、「周りの人と仲良くしてくださいね」と伝えている。いざという時の近所の避難所になってもらう。
  • ゼロエネルギー住宅と言うと、「真四角で屋根に大きな太陽光電池」というイメージがあると思うが、積水ハウスは違う。
  • 買い取り価格が下がり続けるのは自明。自家消費・蓄電が太陽光の主な利用方法になる。
  • 災害公営住宅は、仕様上、太陽光パネルの設置ができない。

積水ハウスの講演に関する感想

収入減や雇用の不安定化を背景に、新築住宅の数は今後も下がり続けると予想されています。
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※出展:野村総研

この逆風に負けずに「新築住宅を売っていこう!」という気概を、パナソニックさんや積水ハウスさんからは感じました。

ふと、「エコ住宅」というコンセプトは、ひと昔の「三種の神器」や「夢のマイホーム」のように、一種のエサとして使われているのかもしれないと感じました。

「エコ・三種の神器」と言うと何になるのでしょう?

  1. 太陽光パネル
  2. 蓄電池
  3. 電気自動車

あたりでしょうか。
エコは高い・・・。