「なぜデンマークは世界一幸福な国になったのか」セミナーレポート

カテゴリーデンマーク

※出展:早稲田大学 ダイバーシティ推進室

男女共同参画・ダイバーシティ先進国、デンマークのについてのセミナーに行ってきました。

開催概要

開催日:2016/07/08
セミナータイトル:「なぜデンマークは世界一幸福な国になったのか ~同性パートナーシップを世界で初めて認めた社会~」
主催:早稲田大学ダイバーシティ推進室
会場:早稲田大学
講師:寺田和弘氏(駐日デンマーク王国大使館上席政治経済担当官)

セミナー内容

デンマークと日本の比較

日本 デンマーク
人口 1億3千万人 600万人
面積 38万平方km 4万平方km(※1)
GDP 4.6兆USドル 3400億USドル
幸福度 53位 1位(※2)
繁栄度 19位 3位(※3)

※1:グリーンランドを入れると220万平方km。グリーンランドはデンマーク王国内の自治領。
※2:2016年版「世界幸福度調査」より。
※3:2015年版「繁栄度指数」より。

デンマーク概要

都道府県は5つ。都道府県の主な業務は病院の運営。国・県・市の役割がハッキリと分かれている。
市長は市議会議員の中から選ばれる。
ドローン実験のデータ分析の会社や、世界最大の海運会社などがある。
デンマーク産の農産物(チーズ、ベーコン等)は日本にも多く輸出されている。

税金と社会保障

日本 デンマーク
所得税 最低税率5%~最高税率45%。平均10%。 最低税率8%~最高税率57%。平均40%。
法人税 約30% 22%
消費税(付加価値税) 8% 25%
年金保険料 国民年金:2万円弱。
厚生年金:約20%。
所得税に含む。
GDP比税収 10% 30%
子ども関連政府支出/年 14,000円 95,000円
一人親世帯の貧困率 60% 4%
難民申請通過率 350人に一人 2人に1人


教育

ほとんどの子どもは18歳になると親元を出る。国から生活費が出る(月10万円)。大学院まで学費無料。
テストは少なく、成績という指標が存在しない。
LGBTについて小学校から教える。
「正しい答えはない」という概念を小学校から教える。状況だけを設定して、意見を述べるよう求められる。

医療

訪問看護も含めて無料。付き添い介護する家族の所得保障あり。

介護

希望者全員がサービスを受けられる。提供主体は市町村。基本的サービスは無料。
65歳以上人口100人に対する介護職の人数は9.4人。日本は5.5人。

年金

65歳以上のすべての国民が基礎年金を受給できる。

労働・仕事について

  • 同労働・同一賃金制度
  • 年間5週間の有給休暇(100%消化)
  • 週37時間労働
  • 最低時給110クローネ(2200円)
  • 母親18週、パートナー2週の産休が認められている
  • 育休は二人で32週間をシェアする
  • 企業の取締役の1/3以上は従業員の代表とする
  • 30歳以上の6%が生涯学習に通学している(日本は1.6%)

その他

  • 生活の質の観点から、80年代以降老人ホームが作られなくなった。
  • 副業や兼業が推奨する職場が多い。視野が広がるから。
  • 役所の窓口での婚姻手続きが廃止された。オンライン申請が義務化された。
  • 刑務所に自分の家具(PC含む)を持ち込める。お金が支給される。外出も自由。
  • 63%の国会議員が自転車通勤している。

質疑応答

Q.なぜデンマークでは多様な価値観が認められるのか?

第二次世界大戦で国土を失ったり、ナチス・ドイツから被害を受けたりしたことで、価値観を押し付けることの弊害を知っているからではないか。
世界人権宣言(※)の影響も大きい。
※人権および自由を尊重し確保するための宣言。

カトリックの国でもあり、LGBTに最初から寛容だったわけではない。

Q.日本が「幸福な国」になるためにはどうしたらよいか?

正解はない。
日本人は真面目で固く、デンマーク人は何でも楽しもうという気持ちが強いと思う。

感想

話を聴く限り、デンマークではあらゆる点がうまく行き過ぎていて、逆に疑いたくなってしまいます。
私もデンマークを訪問したことはあります。しかし、デンマーク人と「幸福度」について話す機会は持てませんでした。デンマーク人が自分の国についてどう思っているかどうか、本当のところは分かりません。
ただ、高い物価・高い税率にも関わらず、デンマーク人が社会に対して怒っているような雰囲気は感じませんでした。
国民が政府に対して、「支払ったお金は後でちゃんと返ってくる」という信頼を持っているからかもしれません。

ところで、最低賃金制度は国を挙げたインフレ政策のようにも思えます。
最低賃金制度は、高い生活水準を保つ上で正常に機能しています。
経済政策に通じた政治家や官僚が多いのだろう、という印象を持ちました。