埼玉県・浦和市のコミュニティセンター会議室で行われた、「再生可能エネルギー活用セミナー(平成27年度 九都県市・再生可能エネルギー活用セミナー)」レポートの後編です。
前編では、
- 太陽熱温水器の過去の販売傾向
- iPhoneのヒット要因
について触れました。
後編では、より具体的な太陽熱温水器の販売戦略について触れます。
iPhoneにもデメリットはある。それでも売れた。
※出展:Bartender
iPhoneにも短所が無かったわけではありません。
例えば、次のような点が挙げられます。
- ガラケーより料金が割高になる。
- ガラケーより操作が難しそう。
- 「PCの代わり」と言うには画面が小さすぎる。
- バッテリー交換不可。
などなど。
このような批判をする人たちの予想に反し、iPhoneの売れ行きは青天井で伸び続けました。
iPhoneが売れた理由をひとことで言えば、
「短所を補って余りある、長所があったから」
という点に尽きます。
もっと言えば、アップルは批判をしてくるユーザーをターゲット層としては見なしていませんでした。
アップルが無視したユーザー層1:ケチな人
「ガラケーより料金が割高になる!」
そう言ってくるのは、価格を唯一の判断基準とする人たちです。
アップルファンは、「アップル製品は、価格以上の価値を私に提供してくれる」という「信念」を持っています。
アップルファンは、多少値段が高かったとしても、購買意欲を低下させるようなことはまずありません。
アップルが無視したユーザー層2:ITリテラシーの低い人
「普通の携帯電話より操作が難しそう。。。」
そう言ってきそうなのは、新製品に興味の薄い高齢者や、機械に弱い人たちです。
アップルファンはもともと機械に強い人が多いですし、「アップル製品はマニュアルなしでも使えるように設計されている」という前提を理解しているため、利用方法に対して不安を持つとは考えにくいです。
また、アップルファンには新しもの好きな人たちが多いため、新しい機械の使い方を覚えること自体が一つの「ユーザー体験」です。
アップルが無視したユーザー層3:スペック至上主義者
「PCの代わり、と言うには画面が小さすぎるでしょ。」
「バッテリーが交換できないなんてどうかしてる。バッテリーの寿命が来たらどうするんだ!」
このような苦情を言ってきそうなのは、機械に詳しくて機能や仕様の重箱を突いてくるような人たちです。
アップルは、パソコン市場で取った戦略と同じように、
「うちの製品がイヤなら、他社の製品を使ってね」
というスタンスを貫くことで、無駄な開発やサポートのコストを省きました。
iPadという先行製品の経験から、iPhoneでユーザがどのような作業をするかについて、アップルはある程度予想できていました。
携帯電話の画面でプログラミングやWeb制作をするような人は、そもそも存在しないか、考慮する必要がありません。
iPhoneでユーザがすることと言えば、せいぜい、
- ニュースサイトを見る
- 乗り換え経路や時刻表の検索をする
- SNSを見る
と予想したため、画面が小さくても問題はないという結論を出しました。
また多くのアップルファンは、バッテリーの寿命が切れる頃には最新モデルに買い替えてくれます。
バッテリー寿命は大した問題にはなりません。
太陽熱温水器が無視してもいいユーザー層。
※出展:Hoosh
iPhoneと同じ戦略を取るのであれば、
- ケチな人
- リテラシーの低い人
- スペック至上主義者
これらのユーザーは無視しても構いません。
太陽熱温水器の見込み客から寄せられる不安・不満点としては、
- 「中国製の方が安いよ」
- 「本当に光熱費がお得になるの?」
- 「曇りの日はお湯が足りなくなるんじゃないの?」
といった内容が考えられます。
太陽熱温水器の「iPhone流」販売戦略
※出展:Sales Sense
ここで、iPhoneの成功要因をそのままパクリます。
1.ファンづくり
私は、ドイツ滞在中に太陽熱温水器のシャワーを使った事がありますが、ホストからその事実を知らされるまでは、シャワーに対して何の価値も感じていませんでした。
何日かたった後で、
「うちでは太陽熱温水器を使ってるんだよ」
とホストさんから教えてもらいました。
屋上にのぼって温水器を見せてもらい、地下の温水タンクも見せてもらいました。
すると不思議なもので、それまで何にも感じなかったシャワーが、
「この温水は太陽の恵みだ!すごい!」
と、非常に価値の高いものへと一気に激変しました。
太陽熱温水器のファンを増やすためには、少なくとも一度は太陽熱のシャワーを使ってもらう必要があります。
例えばモデルハウスやペンションのような施設で、無料でもお試し価格でもいいので、太陽熱で沸かしたお湯にユーザーに触れてもらう機会が必要です。
その他にも、子連れの家族が楽しめるようなイベントを積極的に開催するなど、潜在顧客を育成する必要もあります。
2.機能や利便性
太陽光発電も同時に行いたいユーザのための「発電もできる太陽熱温水器」。
天井に設置できない家のための「壁につけられる太陽熱温水器」。
ヒートポンプを活用し「曇りや雨の日でもお湯を沸かせる太陽熱温水器」など。
既に開発されている技術もありますが、iPhoneの「アプリ」に匹敵するような画期的な機能がないと、ユーザーへのサプライズとはなりません。
3.「本体実質無料」のプロモーション
これは太陽光発電の販売プロモーションになりますが、「ローンで初期費用ゼロ」という制度はすでに存在しています。
・ソーラーローンで太陽光発電の導入「初期費用0円!?」|価格.com
また、「環境価値」という制度で継続的に補助金を受けられるような仕組みも現在整備中です。
・環境価値とは|東京都環境局
できれば、ソフトバンクの「本体実質無料」のように、メーカーや販売業者がリスクを取って工事費だけでも割引するような仕組みが必要です。
太陽熱温水器のセールス対象として最も有望なユーザー層
※出展:ホームズ
太陽熱温水器の最も有望な販売ターゲットは、
「子ども無し、持ち家無し」
という人たちになるでしょう。
単純な話ですが、「子ども無し」ということは、「比較的、時間やお金に余裕がある層」と考えられるからです。
また「持ち家無し」ということは、すぐには太陽熱温水器を取り付ける可能性は低いですが、「今後新築の家を建てる可能性がある」ということです。
太陽熱温水器システムは高価な買い物ではありますが、新築一戸建ての価格に比べれば小さな額です。
さらに、新築時であれば「足場」をそのまま使えるので、既存の家に取り付けるより割安の工事費で済みます。
ターゲット別のセールスプラン
「子ども無し、持ち家無し」というユーザー層は、基本的には20代~30代の若年層と考えられます。
そのため、SNSやセミナー・勉強会などでのプロモーションが効果的です。
例えば、太陽熱温水器を楽しく利用している様子をSNSで拡散してくれた購入者にはキャッシュバックなどで優遇する。
また、金融機関や保険会社・不動産会社などと提携して、「住宅ローンセミナー」「保険セミナー」「不動産入門セミナー」などで、「太陽熱セミナー」を共催するなど。
他にも、ゲームやアニメ、アーティストや音楽フェスティバルとのコラボレーションなども考えられます。
まとめ・感想
※出展:inhabitat
ヒットの裏には、魅力的な商品開発と、徹底的な顧客育成が欠かせません。
メーカーや販売会社の情報発信も重要になってきます。
補助金や税金優遇措置などに頼っている現状では、「太陽熱温水器が普及する可能性は低い」という結論になりそうです。
いっそ、販売会社でも立ち上げるしかない・・・かも。
参考資料
・2年契約でiPhone 3G 8Gバイト版が実質0円──「iPhone for everybody」キャンペーン|itmedia
・念願のiPhoneを獲得した舞台裏 ソフトバンク、トラウマ乗り越える|日経ビジネス
・KDDI、iPhone販売へ ソフトバンク独占崩れる |日本経済新聞